「好きよ、愛しているよ」
両腕に持てるだけたくさんの花束を抱え、ひらひら揺れる真っ黒なワンピースを着て、ひとりの女は呟く。女は木の間からこぼれ出る光を受けながら、その正体を突き止める。空に目を泳がしているのにもかかわらず、涙が頬を伝い、花びらがそれを弾き返す。そして、辺りの土に散っていく。
この光景を女はしらない。
童話にはできないから(2007/03/27)